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ノロウイルス胃腸炎

はじめに

感染性胃腸炎が全国で急増しています。さまざま細菌やウイルスなどが病原体となりますが、冬季においてはノロウイルスによるものが目立ちます。

ノロウイルスの歴史

1968年に、米国オハイオ州ノーウォークの小学校で集団発生した急性胃腸炎の患者から検出されました。1972年には電子顕微鏡下でその形態が明らかにされ、小さく、球形をしていることから「小型球形ウイルス」と呼称されていました。
2002年の国際ウイルス学会で名称が変更され、「ノロウイルス」と命名されました。

ウイルスの特徴

海水や河川水などに分布し、グループⅠ(GI)とグループⅡ(GⅡ)の遺伝子グループがあり、GI は15種類、 GIIは18種類の遺伝子型を持つ多様なウイルスです。

発生のピーク

一年を通して発生しますが、11月くらいから発生件数は増加し、1~2月がピークになります。

感染様式

食中毒によるものと、接触・飛沫などを介する通常の感染症としての二面性を持っています。食中毒では、カキなどの二枚貝の生食と食品取扱者の不十分な手洗いなどが原因となります。接触や吐物・糞便による感染は、家庭、老人健康保健施設、学校などで集団発生することがあります。ノロウイルスは、ヒトにのみ感染し動物にはうつりませんが、少量(10~100個)でも感染が成立し、小腸粘膜で増殖します。

臨床症状

潜伏期・症状

潜伏期間(感染から発症までの時間)は24~48時間で、主症状は嘔吐や下痢、吐き気、腹痛で、発熱は一般に軽度です。時に悪寒、頭痛、筋肉痛を伴い、感染しても発症しない場合や軽い風邪のような症状のこともあります。

臨床経過

通常、これら症状が1~2日続いた後に治癒し、後遺症もありません。しかし、乳幼小児や老人では症状が長引いたり、吐物による窒息や肺炎などの合併症で死亡することもあります。
ウイルスの排泄期間:下痢等の症状がなくなっても、しばらく便とともにウイルスの排泄が続きます。通常では1週間程度、免疫の低下した小児や高齢者では1ヶ月持続することもあります。

治療

抗ウイルス薬やワクチンはなく、対症療法となります。一般に数日で軽快しますが、脱水症を起こさないように留意します。
食事は、症状が強いときは水分のみを摂取します。冷たくないスポーツ飲料や温かい白湯、お茶などを少しずつ飲みましょう。食欲が回復すれば、具のない味噌汁やコンソメスープでも結構です。繊維質や香辛料、硬いもの、脂っこいものは、控えてください。
症状が軽減してきたら、お粥、うどんなどの消化のよいものに合わせ、白身魚などもいいでしょう。空腹感が強いからと、急に普通の食事をとると症状を悪化させますので、注意してください。
また、小児や高齢者で重症の場合には点滴が必要な事もあり、体調がすぐれない場合には医療機関へ受診しましょう。

感染予防

強い感染力のあるノロウイルスでは、接触感染および飛沫感染の予防策が重要になります。

1.手洗いを励行する。

調理前、食事前、トイレ後、患者の糞便や吐物の処理後などは、石けんと流水で手指をよく洗い、清潔なタオル又はペーパータオルで拭きます。

2.食品は十分に加熱する

食品の中心温度が85℃以上で1分間以上になるように、十分に加熱しましょう。

3.調理器具等を清潔に保つ

調理器具を介して二次感染を防ぐため、煮沸消毒(85度1分以上)するか、次亜塩素酸ソーダ200ppm(家庭用漂白剤の200倍希釈液)で拭き、10分置いて水洗い乾燥させましょう。

4.汚物は衛生的に処理する

患者の糞便や吐物の処理は、使い捨てマスクと手袋を着用してペーパータオル等で静かに拭き取ります。その後に、次亜塩素酸ナトリウム1000ppm(家庭用漂白剤の40倍希釈液)で浸すように拭き取り、さら水拭きをします。

5.入浴の際は注意する

入浴前には、おしりをきれいにしましょう。下痢をしている人は、他の人との混浴はさけ、一番最後に入りましょう。

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